やまとことば
やまとことばは、私たち日本人の祖先が、この日本列島において、漢字が伝わるよりもはるか昔、少なくとも縄文の頃には話していたと考えられる原日本語です。
古事記の世界観から表現するならば、神代から語り継ぎ、受け継がれてきた大和の国の言の葉と言えるでしょう。
日本と日本人の原点、それがやまとことばに宿されていると考えることができます。
大和言葉を話すとき、私たちの心の中に、日本人のものの見方や考え方が鮮やかによみがえってくるのです。

音は身体から生まれる

私たちは、言葉を「意味」として理解しています。
しかし、声に出された言葉は、その前にまず「音」として生まれます。
音は、息が動き、喉が震え、舌や唇、口の形が変わることで生まれます。
つまり、一音一音には、それぞれ異なる身体の動きがあります。
身体の動きが違えば、耳に届く響きも自然と変わります。
やわらかく包み込むように聞こえる音。
すっと流れるように聞こえる音。
はっきり区切るように聞こえる音。
日本語の音は、このような身体の働きと響きによって生み出されています。
まずは、いくつかの音を実際に声に出しながら、その違いを感じてみてください。

◾️発声の仕組み
舌先を歯茎に近づけ、狭い隙間から息を流して発音する音
※言語学では「歯茎摩擦音」に分類されます。
◾️身体では
舌先を上の歯ぐきに近づけ、狭い隙間から息を細く長く流して発声します。
◾️響きの印象
狭い隙間から流れ出る繊細な響き。

◾️発声の仕組み
声門を通る息の摩擦で発音する音
※言語学では「声門摩擦音」
◾️身体では
口の中ではほとんど息を妨げず、のど(声門)を通った息をそのまま外へ送り出して発声します。
◾️響きの印象
息が、勢いよく、あるいはふわりと広がるような音に聞こえ、軽やかで、ひらかれた印象の響き。

◾️発声の仕組み
歯茎鼻音
◾️身体では
舌先を上の歯ぐきに軽く当て、鼻にも息を通しながら発声します。
◾️響きの印象
やさしく穏やかで、親しみや安心感を感じさせる響き。

◾️発声の仕組み
口を閉じてから、やさしく開いて発声します。
そのとき、息は鼻にも抜けています。
※言語学では「両唇鼻音」に分類されます。
◾️身体では
上下の唇を合わせ、一度息を止めてから、鼻にも息を通しながらやさしく開いて発声します。
◾️響きの印象
包み込むような、やわらかい響きになります。
身体の使い方が違えば、音の響きも違います。
身体の使い方が違えば、音の響きも変わります。
では、その響きは、やまとことばの意味とどのようにつながっているのでしょうか。
音は、意味を生み出す。
ここまで見てきたように、日本語の一音一音は、それぞれ異なる身体の動きによって生まれています。
発声の仕組みが違えば、耳に届く響きも変わります。
そして、その響きの違いは、やまとことばの中で使われる言葉にも、不思議なほど共通した働きとして現れています。
たとえば、「ま」の音を含む言葉には、「まこと(真、誠)」「まどか(円か)」「間合い」「束の間」などがありますから、「真理」や「時間・空間」を表すものと捉えます。
「は」は、「歯」「葉」「羽」など、「発現」「出る」「発する」ものを表わしていると捉えます。
もちろん、一つひとつの言葉の意味は異なります。
しかし、それぞれの音には、共通して感じられる働きがあるのではないか。
その視点から、一音一音に共通する意味を読み解いたものが音義(おんぎ)です。
音義とは、言葉を辞書のように説明するものではありません。
発声の仕組み、身体の働き、耳に届く響き、そして、やまとことばの中で繰り返し現れる意味を重ね合わせながら、一音一音が持つ本質的な働きを読み解いたものといえます。
この音義を手がかりに古事記冒頭を読み解くと、並ぶ神々の名前が新たな姿を見せ始めます。
そして、人の名前もまた、一音一音の組み合わせとして見つめ直すことができるようになります。



◾️音義
微細・繊細
◾️やまとことばのたとえ
ささやか、ささやき、割く、細雪

◾️音義
発現、発する、出る
◾️やまとことばのたとえ
歯、葉、生える、張る、春

◾️音義
調和(調和・一体化)
◾️やまとことばのたとえ
治る、仲間、凪ぐ、並ぶ、馴れる、鞣す

◾️音義
真理、時間・空間
◾️やまとことばのたとえ
真、誠、正に、円か

『古事記 国宝真福寺本』国立国会図書館デジタルコレクション
古事記の冒頭には、
世界の始まりが描かれています。
古事記は、「天地初発之時(あめつちはじめてひらけしとき)」という一文から始まります。
そのあとに続く神々の名前は、単なる固有名詞ではありません。
音義を手がかりに見つめると、それぞれの神名が世界の成り立ちを表す「働き」として読むことができます。
つまり、古事記は神々の系譜を語るだけではなく、生命や自然がどのように生まれ、どのように調和し、変化していくのかを描いた物語として読むことができるのです。
音義で読み解く
天之御中主神(アマノミナカヌシノカミ)
古事記は、「天地初發之時(あめつちはじめてひらけしとき)髙天原成神名(たかあまはらになりませるかみのなは)天之御中主神(あまのみなかぬしのかみ)」という一文から始まります。そのあとに続く神々の名前は、単なる固有名詞ではありません。
音義を手がかりに見つめると、それぞれの神名が世界の成り立ちを表す「働き」として読むことができます。
つまり、古事記は神々の系譜を語るだけではなく、生命や自然がどのように生まれ、どのように調和し、変化していくのかを描いた物語として読むことができるのです。

『古事記 国宝真福寺本』国立国会図書館デジタルコレクション
アマ
「ア」は、開く、広がる。
「マ」は、真理、時間・空間。
この二つが重なる「アマ」は、どこまでも丸く広がる時間と空間、すなわち宇宙を表します。

ミナカ
「ミ」は、本質、実体。
「ナ」は、一つに調和すること。
「カ」は、奥深さ、根源。
つまり「ミナカ」は、すべてのものが成り立つ大本、中心にある源を表します。

ヌシ
「ヌ」は、一様にする。
「シ」は、統一し、静かにまとめる。
「ヌシ」は、支配するというよりも、全体を一つにまとめる働きを表します。

こうして読むと…
「アマノミナカヌシ」は、
宇宙(アマ)の中心(ミナカ)にあって、全体を一つにまとめる存在(ヌシ)
という意味になります。
だから古事記では、この神が最初に現れるのです。
宇宙が広がるだけでは秩序は生まれません。
その中心には、全体を統一し、成り立たせる働きがある。
古事記は、その働きを「天之御中主神」という神名で表現している、と音義では読み解きます。

天之御中主神のイメージ図
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名前もまた、
一音一音の組み合わせです。
古事記に登場する神々の名前を音義から読み解くと、一音一音が互いに結び合い、世界や生命の働きを表していることが見えてきます。
それと同じように、私たち一人ひとりの名前もまた、意味を持つ音の組み合わせとして見つめることができます。
名前は、生まれたときから自分を指し示し、家族や友人、さまざまな人の声によって、何度も何度も数えきれないほど呼ばれながら人生とともに歩んできた言葉です。
その一音一音の働きと連なりを読み解き、実際に歩んできた人生と重ねていくと、自分にとっては当たり前すぎて気づかなかった持ち味や、大切にしてきた価値観、人との関わり方が見えてくることがあります。
もちろん、名前が人の性格や運命のすべてを決めるわけではありません。
名前は、人生の答えではなく、自分自身を見つめるための手がかりです。
答えを遠くに探す前に、
まず、自分の名前から。
世の中には、自己理解を深め、能力を高め、生き方を変えるための、さまざまな学びや方法があります。
新しい知識を身につけること。
心や身体を整えること。
まだ知らない自分の可能性を探ること。
それらも、それぞれに意味のある取り組みだと思います。
けれど、何かを新しく加えたり、特別な力を身につけたりする前に、まず見つめておきたいものがあります。
それは、生まれたときから自分とともにあり、人生の中で何度も呼ばれてきた、自分自身の名前です。
やまとことば姓名鑑定は、外から新しい何かを与えるものではありません。
名前を手がかりに、すでに自分の中にある持ち味や、これまで大切にしてきたもの、人生を通して繰り返し現れてきたテーマを見つめ直すものです。
遠くに答えを探しに行く前に、まず、最も身近な自分の名前に立ち返る。
そこから自己理解を始めることが、その後に選ぶ学びや挑戦を、自分にとってより意味のあるものにしてくれると考えています。
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名前は、
自分を知るための入り口です。
やまとことば姓名鑑定では、
名前から一方的に人物像を決めるのではなく、
名前の音と、
これまで歩んできた人生を
丁寧に重ねていきます。
その対話を通して、
ご自身の持ち味や人生を、
自分自身の言葉で受け取り直していきます。
世の中には、
自己理解や能力開発、
様々な学びがあります。
しかし、
新しい何かに踏み出す前に、
生まれてからずっと
あなたと共にある名前を
見つめ直してみませんか。